パソコン画面で沖縄のサイトをぼーっと眺めていた時のことです。「ちゅらうちなー草の根平和貢献賞」という何やら温かそうな名前の表彰制度を発見して、思わず「え?なにこれ?」と声に出してしまいました。
正直、最初は「また行政の形式的な表彰制度かな」と思ったんです。でも調べれば調べるほど、これが想像以上に深くて、温かくて、そして本当に必要な制度だということがわかってきました。県庁の堅い資料を読みながら、なぜか目頭が熱くなってしまった自分にびっくりです。
そもそも「ちゅらうちなー草の根平和貢献賞」って何?
この賞は、沖縄県知事公室平和・地域外交推進課が令和元年に創設した比較的新しい表彰制度です。「県内において平和につながる身近な社会貢献活動に取り組む方々を2年に一度表彰し、平和で豊かな地域社会の実現に寄与すること」が目的なんですが、この「身近な」という言葉がポイントなんです。
つまり、国際会議で握手している偉い人たちじゃなくて、あなたの隣に住んでいるおじさんやおばさん、学校で一生懸命頑張っている子供たちの「ちょっといいこと」を認めてくれる制度なんですよね。
表彰部門は2つ:
- 一般部門:5年以上継続して社会貢献活動を行っている個人・団体
- 学校関係部門:平和学習などを積極的に行っている学校やグループ
それぞれ3者程度、合計6つの個人・団体が選ばれます。2年に1回の開催で、現在までに3回実施されています。
沖縄平和賞との絶妙な棲み分け
沖縄県には「沖縄平和賞」という別の表彰制度もあります。こちらは平成13年創設の歴史ある賞で、アジア太平洋地域の平和構築に貢献する国際的な活動を表彰し、副賞として1,000万円も贈られる重要な賞です。
でも草の根平和貢献賞は全く違うコンセプトなんです。国際的な大きな活動ではなく、本当に身近で小さな、でも確実に地域を良くしている活動に光を当てる。言ってみれば、沖縄平和賞が「国際線」なら、草の根平和貢献賞は「地域密着の路線バス」みたいなものでしょうか。
どっちも大切だし、どっちも必要。この棲み分けが、沖縄の平和への取り組みの奥深さを物語っています。
第1回受賞者たちの物語が胸熱すぎる
第1回(令和元年)の受賞者を見た時、私は本当に感動しました。
まず「GENNO65(ゲンノーロクゴー)」。40歳を過ぎて20年以上楽器を手にしていなかった地域の同級生たちが結成したオヤジバンドです。10年以上チャリティライブを継続開催し、収益を国際協力団体に寄付しているんです。趣味の音楽活動を通じた社会貢献って、まさに草の根の典型じゃないですか?
「株式会社丸浩重機工業」も素晴らしい。この会社は「平和祈念こいのぼりまつり」で巨大こいのぼりを摩文仁の地で泳がせる取り組みに5年以上無償で協力しています。代表者が沖縄戦で失った家族への思いを胸に「戦争はやってはいけない」との願いを込めた活動です。企業がこういう形で平和に貢献するって、なんか泣けませんか?
学校関係部門の「恩納村立安富祖中学校1年1組」もすごいんです。この子たちは「戦争めし」を実際に野外で体験し、慰霊祭に参加するなど、体験型の平和学習を実践しています。戦争体験の聞き取りでは全員が涙したそうです。中学1年生が涙を流しながら戦争について学ぶ姿を想像すると、胸が詰まります。
第2回、第3回で見えてきた制度の広がり
第2回(令和3年)では「南風原平和ガイドの会」「NPO法人メッシュ・サポート」「うるま市立宮森小学校」など、さらに多様な活動が表彰されました。
そして第3回(令和5年)の受賞者がまた興味深いんです。
「株式会社桃原農園」は2015年の沖縄戦後70周年を機に「平和の木を育てよう」活動を開始。平和について考えるイベントの開催や自主制作した「平和の木を育てよう」リーフレットを地元小学校へ寄贈するなど、植物を育てる”身近な幸せ”から平和を考えるアプローチが評価されました。
「琉球フットボールクラブ株式会社」、つまりFC琉球も受賞しています。サッカークラブが?と思いましたが、地域に根ざした社会貢献活動、小学生無料招待の「FC琉球夢パスプロジェクト」を5年以上継続し、海洋保全活動や食糧支援活動なども行っているんです。スポーツを通じた地域貢献も立派な平和活動なんですね。
個人では「新垣ゆき」さんが受賞。故中山キクさんの意志を引き継ぎ、沖縄戦で動員された「白梅学徒隊」の体験を語り継ぐ平和ガイド活動を20年にわたって続けています。戦争体験者が減少する中で、その意志を受け継いで語り続ける姿に頭が下がります。
学校部門の取り組みがまた泣ける
学校関係部門の取り組みがまた素晴らしいんです。
「劇団石川ひまわりキッズシアター」は、1959年に宮森小学校で起きた「米軍ジェット機墜落事故」を忘れない想いから2012年に発足。犠牲者と同年代の児童が「過去は変えられないが、未来は私たちの力で変えることができる」というテーマで平和劇に取り組んでいます。
「沖縄県立読谷高等学校」は1987年から、なんと37年間も生徒主導で平和特設授業を継続。伝統劇「伝えたい思い」をはじめ、他校では見られないオリジナリティに溢れた取り組みを実践しています。37年ですよ!この継続性、半端ないです。
応募条件は意外とシンプル、でも奥が深い
現在募集中の第4回の応募条件を見てみると、一般部門なら:
- 社会貢献活動を5年以上継続していること
- 活動の拠点が県内にあること
たったこれだけ。でも「5年以上継続」という条件が、実はめちゃくちゃ重いんですよね。一時的な善意や流行りの活動じゃダメで、地道に、コツコツと続けていることが求められる。
自薦・他薦問わずで、令和7年10月20日が締切。推薦書は県のホームページからダウンロードできます。意外と身近にいませんか?5年以上何かいいことを続けている人。
なぜこんな制度が必要なのか?沖縄だからこその深い理由
最初は「なんで県がこんな小さな活動まで表彰するの?税金の無駄遣いじゃない?」と正直思いました。でも調べていくうちに、これがものすごく重要な制度だということがわかってきたんです。
沖縄は戦争で多くの犠牲を払いました。その記憶を風化させないためには、大きな記念行事や立派な資料館も必要ですが、それと同じくらい、日常の中で平和を実感し、平和に貢献している人たちがいることが大切なんです。
隣のおじいちゃんが戦争体験を語り継いでいる。近所のおばあちゃんが戦跡の清掃をしている。子供たちが平和について学び、考えている。会社が地域のために無償で協力している。そういう「当たり前」のように見える活動こそが、実は平和な社会の基盤を支えているんじゃないでしょうか。
表彰式の雰囲気がまた温かい
第3回の表彰式は令和5年12月23日に沖縄県市町村自治会館ホールで開催されました。県の公式資料の写真を見ると、知事と受賞者が一緒に写っている集合写真があります。みんなの表情が本当に嬉しそうで、誇らしげなんですよね。
表彰式の後には沖縄平和賞シンポジウムも開催されて、平和について深く考える機会も提供されています。ただ表彰して「はい終わり」じゃなくて、そこから新たな学びや交流が生まれる仕組みになっているのが素晴らしいと思います。
受賞者同士のネットワークも生まれているようで、草の根の活動がさらに広がっていく仕組みにもなっています。
私たちにもできることがたくさんある
この制度について調べていて一番感じたのは、「平和への貢献」って決して特別なことじゃないということです。戦争体験を聞く、慰霊碑を清掃する、チャリティ活動をする、子供たちに平和の大切さを教える、地域のイベントに協力する…。
どれも私たちの身の回りでできることばかりです。いや、むしろすでにやっている人も多いんじゃないでしょうか。それがちゃんと評価され、表彰される制度があるということが、なんだかとても心強いです。
自分も何かできることはないかな、と真剣に考えるようになりました。大げさなことじゃなくていいんです。地域の清掃活動に参加するとか、戦争体験談を聞く機会があったら積極的に参加するとか、子供たちに平和の大切さを伝えるとか。
他の都道府県にはない沖縄らしい特色
「ちゅらうちなー」という言葉には「美しい沖縄」という意味が込められています。ちゅら(美しい)うちなー(沖縄)。この制度名からも、沖縄の人たちの平和への思いの深さと、地域を愛する気持ちが伝わってきます。
他の県にも似たような制度はあるでしょうが、「平和」というテーマに特化して、しかも「草の根」という言葉を使っているところに、沖縄らしい特色があります。戦争の記憶が深く刻まれた土地だからこそ、平和への願いも深い。そしてその願いを、県民一人ひとりの小さな善意の活動として具現化しようとしている。
これって、本当に素晴らしいことだと思うんです。
制度の未来と私たちの役割
現在第4回の募集が行われていますが、この制度はきっとこれからも続いていくでしょう。そして続けていくべきだと思います。
なぜなら、平和というものは一度達成したら終わりではなく、日々の積み重ねで維持していくものだから。大きな戦争がなくても、地域の中での小さな対立や無関心は平和を脅かします。そういう時に、地道に平和のために活動している人たちの存在がどれだけ大切か。
私たちにできることは、まず身の回りでこういう活動をしている人を見つけて、応援すること。そして可能なら自分も何か始めること。大きなことじゃなくていいんです。小さな一歩で十分。
最後に:小さな光が集まって大きな明かりに
この記事を書きながら、改めて思ったのは、平和って遠い話ではないということです。私たちの日常の中にあるちょっとした優しさ、ちょっとした思いやり、ちょっとした行動の積み重ねが、平和な社会を作っているのかもしれません。
「ちゅらうちなー草の根平和貢献賞」は、そんな当たり前だけど大切な活動に光を当ててくれる制度です。小さな光かもしれませんが、それが集まれば大きな明かりになります。
あなたの身の回りにも、きっと受賞に値する素晴らしい活動をしている人がいるはずです。ぜひ一度、沖縄県のホームページを覗いてみてください。そして、もし心当たりのある活動があったら、推薦してみませんか?あるいは、自分も何か始めてみませんか?
沖縄の人たちが教えてくれた、「小さな善意も積み重なれば大きな力になる」という大切なことを、私たちも忘れずにいたいと思います。平和は、遠い理想ではなく、今日からできる身近な行動の先にあるのかもしれません。
参考リンク: