小さなランナーたちが紡ぐ24年の物語

え?駅伝って箱根だけじゃないの。

和歌山市内を車で走っていたその日、突然道路に規制テープが張られて「この先駅伝通過につき通行止め」の看板が目に飛び込んできた時、正直そう思った。2月の肌寒い風が車内に入り込み、窓の外では小学生らしき子どもたちがユニフォーム姿でウォーミングアップしている。

「あ、これがジュニア駅伝ってやつか」

24年前から続く、和歌山の冬の風物詩

和歌山県市町村対抗ジュニア駅伝競走大会。長ったらしい名前だけど、要するに県内の小中学生が市町村代表として走る駅伝大会のことです。

この大会、実は2002年(平成14年)2月17日に第1回大会が開催されて以来、もう23年も続いているんですね。和歌山県の公式資料によると、大会の趣旨は「スポーツの振興と青少年の健全育成を図るとともに、県及び各市町村の活性化に資するため」となっている。

まあ、お役所的な表現だけど、要は「子どもたちにスポーツを通じて頑張る機会を与えて、地域も盛り上げよう」ってことでしょう。

21.1kmに込められた思い

現在のコースは紀三井寺公園陸上競技場を出発し、県庁前を決勝とする特設コースの10区間、21.1キロメートル。

21.1km…ハーフマラソンと同じ距離ですよ。大人でも結構しんどい距離を、小中学生が分担して走るんです。しかも和歌山の2月って、結構寒いんですよね。海風が吹いて、特に朝は凍えるような寒さです。

区間割りを見ると、なかなか考えられている。

  • 第1区(中学生男子)3.0km – いきなり最長区間でプレッシャー大
  • 第2区(中学生女子)1.7km – 短めだけど重要な流れ
  • 第3区(小学生女子)1.6km – 小さな体で一生懸命
  • …という具合に、第10区(中学生男子)3.2kmまで続く

各区間の距離設定も絶妙で、小学生には無理のない距離、中学生にはちょっと頑張れば走れる距離になっている。これ、きっと何年もかけて調整してきたんでしょうね。

第1回大会の思い出(って言っても私見てないけど)

第1回大会は2002年2月17日に開催された。結果を見ると、優勝は和歌山市で、1時間9分57秒。2位が下津町、3位が御坊市でした。

下津町って…今は海南市に合併されてるよね。そうか、この23年間で和歌山県内の市町村も随分変わったんだな。

興味深いのは、第1回大会のコースは「県庁前→和歌山マリーナシティ」だったこと。つまり現在とは逆向きだったんです。しかも8区間でした。現在の「紀三井寺公園陸上競技場→県庁前」の10区間コースへの変更は、選手の安全性や観客の利便性を考慮した結果なんでしょうね。

合併の波に揉まれながらも

平成の大合併で、和歌山県内の市町村数は大幅に減った。昔は那賀郡とか日高郡とかで細かく分かれていた町村が、どんどん合併していった。

下津町は海南市と合併、美山村や龍神村は田辺市と合併、那賀町・桃山町・貴志川町は紀の川市になった…この駅伝に参加していた子どもたちも、大会中に「僕、○○町から来ました」って言ってたのが、翌年には「○○市です」に変わってたりしたんでしょうね。

でも逆に考えると、合併によって人口が増えた市は選手層も厚くなったかも。田辺市なんて、旧田辺市に加えて龍神村、中辺路町、大塔村、本宮町が合併したから、山間部の足腰の強い子どもたちも加わって、むしろ強くなったんじゃないかな。

来年2月に迫る第24回大会への期待

2025年2月9日に開催予定の第24回大会。もう準備は着々と進んでいるはずです。

大会要項を見ると、開始式は2025年2月9日(日)10:30から紀三井寺公園陸上競技場で行われ、11時にスタート。表彰式は競技終了後の12:40頃から県庁前特設会場で予定されています。

毎年この時期になると、各市町村では代表選考会が行われているはず。子どもたちは寒い中、一生懸命練習しているんでしょうね。

各市町村の選手育成システム

これだけレベルの高い大会になってくると、各市町村も本気で選手を育成してるはず。

和歌山市なんて人口35万人もいるんだから、選手層はめちゃくちゃ厚いでしょう。でも過去の結果を見ると、必ずしも人口の多い市が勝つとは限らない。

多分、成功している市町村は陸上クラブとか学校の部活動とかが充実してるんじゃないかな。指導者のレベルも高そうだし、練習環境も整ってるのかも。

一方で、人口の少ない町村は選手確保が大変そう。高野町とか北山村とか、そもそも小中学生の数が限られてるから、10人の選手を揃えるだけでも一苦労でしょう。

でも、だからこそこの大会の意味があるんだと思うんです。

子どもたちにとっての「県代表」

小学生や中学生にとって、「市町村代表」って響きはめちゃくちゃ特別だと思うんですよ。

普通の学校の運動会とか、せいぜい市内の大会くらいしか出る機会がないのに、いきなり「君、県大会に出てもらうから」って言われたら、そりゃテンション上がりますよね。

しかも会場は県庁前。知事さんがスターターを務めて、テレビカメラも来て…子どもにとっては完全に「プロの世界」です。

大会要項を見ると、表彰は総合8位まで。つまり30市町村くらいが参加してるとすると、上位4分の1に入れば表彰台に上がれるってこと。

これ、子どもたちにとってはめちゃくちゃ励みになるでしょうね。

保護者の熱意も半端ない

こういう大会って、子どもたち以上に保護者の方が熱くなりがちですよね。

朝早くから弁当作って、応援グッズ持って、沿道で「○○ちゃーん!」って声を枯らして応援してる。SNSには「うちの子、区間5位でした!」とか投稿されてるんでしょうね。

でも、それでいいと思うんです。親が本気で応援してくれるって、子どもにとってはすごく嬉しいことだから。

大会運営の裏側:ボランティアと交通規制

ボランティア募集のチラシを見ると、かなりの人数のボランティアが必要なんですね。

給水所の運営、交通誘導、記録集計…21.1kmのコースを安全に運営するためには、本当にたくさんの人の協力が必要。

しかも交通規制も大がかり。10時45分から12時45分まで、和歌山市内の主要道路が次々と通行止めになる。

これ、地元の人にとってはかなり迷惑…じゃなくて、協力が必要な行事ですよね。コンビニに買い物に行こうと思っても道が通れない、病院に行く予定が延期になった、とか実際にありそう。

でも、そういう地域の協力があってこそ、子どもたちが安全に走れるわけです。

和歌山放送の実況中継

面白いのは、この大会、和歌山放送でLIVE中継されてるんですって。ラジオで駅伝中継って、なんか昭和っぽくて良いじゃないですか。

実況アナウンサーが「第3区、小学生女子の部、現在トップは…」なんて言ってるのを、おじいちゃんおばあちゃんがラジオで聞いてるんでしょうね。

「あ、隣の孫が走ってる」とか「うちの町は今年はダメかなあ」とか言いながら。こういうローカル感、嫌いじゃないです。

23年間で変わったこと、変わらないこと

第1回大会の優勝タイムは1時間9分57秒でした。これが今後どう変化していくのか、来年2月の第24回大会の結果が楽しみですね。

23年間の中で確実に変わったのは、コースと区間数。県庁前スタートから紀三井寺スタートへ、8区間から10区間へ。きっと安全性や運営のしやすさを考慮した変更なんでしょう。

一方で変わらないのは、子どもたちの一生懸命さ。23年前も今も、みんな精一杯走ってるんでしょうね。

卒業生たちの今

第1回大会に出場した小学生は、もう30歳を超えてるはず。中学生だった子は35歳くらい。

きっと今は社会人として働いてて、結婚して子どもがいる人もいるでしょう。その子どもが今度は同じ大会に出場するかもしれない。

「お父さんも昔この大会に出たんだよ」 「嘘でしょ、お父さんが?」 「本当だよ、第○区を走ったんだ」

なんて会話が、和歌山県内のあちこちで交わされてるのかも。

そういう世代を超えた繋がりって、いいですよね。

スポーツを通じた地域づくり

和歌山県の企画部スポーツ課が主催するこの大会、単なるスポーツイベントじゃないんですよね。

「県及び各市町村の活性化に資するため」という目的が明記されてる通り、地域振興の側面もある。

子どもたちが頑張ってる姿を見て、大人たちも元気をもらう。他の市町村の選手と交流することで、県内の結束も深まる。メディアに取り上げられることで、和歌山県のPRにもなる。

一石何鳥にもなってるわけです。

少子化の影響は?

でも正直、気になるのは少子化の影響。

和歌山県の人口は23年前と比べて確実に減ってるし、特に小中学生の数はかなり減ってるはず。山間部の町村なんて、そもそも10人の選手を確保するのが困難になってるんじゃないかな。

複数の町村で合同チームを作ったり、選手の兼任を認めたり、何らかの工夫が必要になってくるかもしれません。

でも、だからこそこの大会の価値は高まってるとも言える。子どもたちにとって貴重な体験の場だから、なんとか続けていってほしいですね。

見る人を感動させる「本気」

駅伝って、なんで見てる人が感動するんでしょうね。

多分、みんなが「本気」だからだと思うんです。走ってる子どもたちも本気、応援してる家族も本気、運営してるボランティアも本気。

テレビで見る箱根駅伝とか、確かにレベルは高いし感動もするけど、なんか「お客さん」として見てる感じがある。でもこのジュニア駅伝は、地域の人みんなが当事者。

「あの子、うちの隣の子だ」 「この区間、去年うちの息子が走ったなあ」 「来年はうちの娘も出られるかな」

そういう身近さがあるから、余計に感動するんでしょうね。

和歌山らしさも魅力

コースも和歌山らしくて良いじゃないですか。紀三井寺公園から出発して、マリーナシティを通って、最後は県庁前。

観光地も通るし、行政の中心地でゴールする。和歌山県を代表する場所を小中学生が走り抜けていく。

観光客が偶然この光景を見たら、「和歌山って、子どもたちを大切にする温かい地域なんだな」って思うでしょうね。

教訓:スポーツが繋ぐもの

23年間続いているこの大会を見ていて思うのは、スポーツの持つ力の大きさです。

  • 世代を繋ぐ力:親子、祖父母と孫の共通の話題になる
  • 地域を繋ぐ力:市町村の枠を超えた交流が生まれる
  • 時代を繋ぐ力:23年間という歴史の中で多くの思い出が積み重なる
  • 人を繋ぐ力:選手、家族、ボランティア、観客みんなが一つになる

子どもたちにとっては、勝ち負けよりもこうした「繋がり」の体験こそが一番の財産になるんじゃないでしょうか。

大人になって仕事で行き詰まった時、「そういえば中学生の時、市の代表で県大会に出たよな」って思い出すかもしれない。その時の「やればできる」という自信が、人生の支えになるかもしれない。

そう考えると、この大会に関わる全ての大人たちは、子どもたちの未来に投資してるってことですよね。


来年2月の第24回大会はどんなドラマが生まれるんでしょうか。どのチームが優勝するのか、新記録は生まれるのか、それとも意外な伏兵が現れるのか。

2025年2月9日の和歌山に、また多くの小さなランナーたちの熱い想いが駆け抜けていくことでしょう。そして、その姿を見た大人たちが、改めてスポーツの素晴らしさ、子どもたちの可能性を感じ取ることでしょう。

あなたも機会があれば、沿道で応援してみませんか。きっと、普段忘れがちな「純粋に頑張ることの美しさ」を思い出させてくれるはずです。

参考リンク

取り組み