パソコンの画面を見つめていた僕は、思わず「え?」と声に出してしまった。検索していたのは「地方 シェアオフィス」というワードだったのだが、出てきた画像は明らかに小学校の教室。しかも木の匂いがしそうなほど温かみのある内装で、黒板の横にはプロジェクターが設置されている。
場所は秋田県五城目町。2025年9月現在の人口は7,319人という小さな町にある、旧馬場目小学校を改装した施設「BABAME BASE」というらしい。僕はこの瞬間、なぜかこの初めて聞く施設について、もっと詳しく知りたくなってしまった。
BABAME BASEって、一体何なんだ?
五城目町地域活性化支援センター、通称BABAME BASE。正式な名前からして、いかにも行政らしい堅い響きだけれど、実際は全然違うらしい。2013年3月に廃校になった馬場目小学校を、同年10月28日に町がシェアオフィスとして再生させた施設で、2019年4月からは一般社団法人ドチャベンジャーズが指定管理者として運営している。
「ドチャベンジャーズ」って何だよ、と思うひともいるだろう。僕も最初はそう思った。どうやら「土着ベンチャー」の略らしく、地域に根ざした挑戦をする人たちのことを指すらしい。あと、アベンジャーズも絶対意思してるはず。ネーミングセンスがすごい。
施設の概要を見ると、木造2階建て、敷地面積13,401平方メートル、建物面積3,263平方メートルの校舎に事業支援室が19室ある。しかも現在7室が空いているらしい。
で、料金はいくらなんだ?
これが調べてみると、ちょっと複雑なシステムになっている。BABAME BASEの利用方法によると、大きく分けて2つのパターンがある。
長期の入居(町役場への申請が必要)
- 事業支援室:月額20,000円
- 事業支援棟:月額30,000円
シェアオフィス入居(BABAME BASEへ直接申請)
- 事業支援室:月額7,000円
都内のコワーキングスペースが月2〜3万円することを考えると、確かに破格だ。特にシェアオフィスタイプなら7,000円って、都内の駐車場代より安いじゃないか。
小学校の教室で働くって、どんな感じなんだろう?
想像してみて欲しい。朝、出勤すると校舎の玄関で「おはようございます」と挨拶を交わす。階段を上がって自分の教室(もといオフィス)に向かう途中、体育館からドローンの音が聞こえてくる。公式サイトによると、実際にドローンスクールの講習なんかもやっているらしい。
現在入居している業種を見ると実に多彩だ。IT企業もあれば、デザイン会社もある。地域活性化に取り組む団体もいれば、教育事業を手がけるところもある。まさに「協奏するコミュニティ」とサイトに書かれている通りだ。
僕が特に興味を惹かれたのは、施設の使い方の自由度の高さだった。教室を丸ごと借りて自由にカスタマイズできるし、体育館やグラウンドも使える。都心のオフィスじゃ絶対に味わえない開放感がありそうだ。
でも、田舎暮らしって大変じゃないの?
正直に言うと、僕も最初はそう思った。でも調べてみると、意外とアクセスは悪くない。秋田市から北30キロの位置にあって、最寄りのバス停からはタクシーで10分程度。飛行機を使えば、それなりに都心とのアクセスも可能だ。
それに、町には500年以上続く朝市があるし、温泉もある。サイトのアンバサダーの一人、成瀬勇輝さん(ON THE TRIPの人)のコメントが印象的だった。「シングルの水風呂に、日によって色が変わる熱めの乳白色な湯の越温泉、肌がツルツルになる小倉温泉、トロトロの感触に埋没する滑多羅温泉。このシェアオフィスにいれば、仕事して温泉でトリップして、またはしごして温泉に。温泉に近いシェアオフィス、最高!」
温泉好きの僕には、これは相当魅力的に聞こえる。都内で疲れ切った体を癒すのに毎回3000円払ってスーパー銭湯に行くより、よっぽどコスパが良さそうじゃないか。
「世界一こどもが育つまち」って何だ?
BABAME BASEのビジョンは「世界一こどもが育つまち」。最初は何だこりゃ、と思ったけれど、館長の柳澤龍さんのメッセージを読むと意味がわかってくる。
「挑戦に大小はなく、どれもが尊い。人生の主人公になるきっかけをくれるのが挑戦だと思います」
どうやら、大人がこども心を取り戻して挑戦する姿を、次世代の子どもたちが見て育つ環境を作りたいということらしい。なるほど、そういうことか。
入居者の一人がかけた言葉も印象的だ。「君たちが来てから新しい取り組みが増えたことで、チャレンジしても叩かれることがなくなったんだ」。これ、地方創生の本質を突いていると思う。
指定管理者制度って、実は巧妙なシステム?
ここで少し制度の話をしておこう。BABAME BASEは町の施設だが、運営は民間の一般社団法人ドチャベンジャーズが行っている。これが「指定管理者制度」というやつだ。
五城目町地域活性化支援センター設置条例によると、指定管理者は「当該支援センターを使用する者から利用料金を自己の収入として収受する」とある。つまり、家賃収入で運営費を賄う仕組みになっている。
これ、実は結構画期的なシステムだと思う。行政が建物を提供し、民間が柔軟に運営する。利用者のニーズに応じてサービスを改善できるし、行政の負担も軽減される。しかも入居者たち自身が運営に関わることで、単なる「借り手」ではなく「仲間」という意識が生まれそうだ。
でも、全てがバラ色じゃない現実
もちろん、いいことばかりじゃないだろう。冬の秋田は雪が深いし、都心に比べて選択肢は限られる。コンビニまで車で行く必要があるし、終電を気にしなくていい代わりに、夜の娯楽はほとんどなさそうだ。
それに、地方での事業展開は都心とは勝手が違うはずだ。町の募集要項には「起業等により地域における新たな事業等を創出する方」なんて要件があるけれど、実際にやってみると、そう簡単じゃないんじゃないかな。
顧客基盤も狭いし、人材確保も大変だろう。でも逆に言えば、そんな制約があるからこそ創造性が刺激される部分もありそうだ。限られた資源でどう価値を生み出すか。地域の特性をどう活かすか。都心では思いつかないアイデアが、案外ここでは自然と湧いてくるのかもしれない。
結局、BABAME BASEって何がすごいの?
調べれば調べるほど、BABAME BASEのすごさは「廃校を活用した」ことでも「安い家賃」でもないことがわかってくる。一番すごいのは、「挑戦することが当たり前」という文化を作り上げたことだと思う。
制度や箱物を作るだけじゃダメで、「挑戦を歓迎する空気」を作ることが大切。BABAME BASEは、まさにそれを実現しているように見える。公式サイトによると視察者も多く訪れているらしく、この文化に魅力を感じる人が多いからだろう。
まとめ:調べてみたら、なんだか行ってみたくなった
僕みたいな人間でも、こういう場所なら何か新しいことを始められそうな気がしてくる。失敗しても誰も責めないし、むしろ「次はどうする?」って一緒に考えてくれそうな雰囲気がある。
BABAME BASEは、ただの「安いシェアオフィス」じゃない。挑戦する大人たちが集まって、お互いを刺激し合いながら成長していく場所なんだろう。制度的にも運営的にも、よく考えられたシステムになっている。
調べているうちに、なんだかこの廃校に実際に足を運んでみたくなった。見学も受け付けているらしいし、今度時間を作って秋田まで行ってみようかな。
もし地方での起業や新規事業を考えている人がいたら、一度見学に行ってみることをお勧めする。きっと、想像していたよりもずっと面白い場所だと思うよ。
参考リンク: