猟師も占い師も「中富良野町でこの仕事をするには?」|移住して、図鑑の最後のページを書く

公開日: 2026-09-29
中富良野町/読む人のために、ページを空けておく町/① しごと図鑑/② 図鑑に載る人/③ 住み始めた人の一年。窓辺の机で開いた図鑑と鉛筆、窓の向こうに畑と山並み。

北海道中富良野町が2026年3月に発行した電子書籍「なかふらの未来へつながるしごと図鑑」の下巻37ページには、こう書かれています。「この図鑑には、上・中・下巻あわせて99人の仕事を集めました。どれも本当にある仕事です。同じ職業でも、そこへたどり着く道は、人それぞれ。この図鑑にはたくさんの人生が詰まっています。そして、最後の1人。100人目はあなたです。」※1

図鑑に載るのはどこかで働く誰かで、読む私は眺める側にいる。そう思っていました。

ところが、この図鑑の最後のページを書くのは、読む人です。37ページの見開きの右半分には、名前と職業名、「やりたい理由」の欄と人生年表の枠があり、左半分は「未来のあなたへ手紙を書くつもりで記入してみましょう」と誘っています※1。

では、この図鑑をつくった町は、誰のために、どんな場所を空けているのか。

たどっていくと、場所は三つ見つかります。図鑑の一人ずつのページには、この町でその仕事を始めるための道筋の欄があります※2。12月12日には、図鑑に載る人が会場に来て話す対面の回が予定されています※3。そして秋の駅前には、誰でも送れる写真とひとことを並べる展示が予定されています※4。

この記事では、自治体と国が発表している一次資料を読んで見えてきた、

という3つの柱を、よその例も交えて解説します。モノサシは一つだけ。この町は「誰のために、場所を空けているか」。締めくくりに、私の見立てを置きます。

中富良野町のしごと図鑑|99人のページにある「中富良野町でこの仕事をするには?」

一つ目の柱は、図鑑の一人ずつのページにある、この欄です。

話を聞いた相手は、それぞれの職業で働く女性たちで、多くは町の外で働いています※5。一人ずつのページには、この町でその仕事を始めるなら、という道筋が、いくつかのステップに分けて書かれています(図1)。

猟師のページは狩猟免許を取るところから始まり、最後が「中富良野町の猟師と関係を築き、地域の状況や猟の実情を教えてもらう」です※6。占い師のページは、占いに触れて学んだあと、3つ目に「中富良野町や近隣地域のお祭りやイベントに出店し、占い師として町内の方々に活動を知ってもらう」※7。シェア型本屋のページの3つ目は「棚主募集ではなく『一緒につくる仲間探し』という姿勢で、関わってくれる人を探す」です※8。

この三つでは、道筋の途中から先に、地元の人と知り合う一歩が入っています。よその町で身につけた仕事の手順の中に、この町の誰かと出会うための一歩が空けてあります。

しごと図鑑/99人の仕事/100人目はあなたです。机で開いた図鑑の空いたページと鉛筆、窓の外に畑と遠い山並み。
図1 99人の仕事のあとに、読む人のページ(※9)

町の外や、来て間もない人の声を聞く自治体は、ほかにもあります。山口県の光市は市から引っ越していった人にも住み心地を尋ね、宮崎県の日向市は、住んで5年未満の人の住み心地をまちづくりの目標の一つにしています※10。

中富良野町のしごと図鑑セミナー|12月12日、図鑑に載る人がなかまーるで話す

二つ目の柱は、図鑑に載る人が町で話す日です。

2026年7月には、図鑑に出てくる人から直接話を聞く回を翌年1月までに5回開く、という案内が町から出ました(図2)※3。

そのうち、話し手が会場に来る「対面」の回の一つが、12月12日の土曜日です。登壇はシェア型本屋とDIYアドバイザーと案内され、会場は、ふれあいセンターなかまーるの1階です※11。

図鑑でシェア型本屋の仕事を語っているのは、2011年に家族の転勤で福岡から札幌へ移り、2025年2月にシェア型書店を開いた人です。子どものころから本屋での出会いに世界を広げてもらったこの人は、ページの中で「そんな大切な文化を失いたくない、小さくてもいいから自分たちの手でその場所を取り戻したい。」と話し、いまは棚を借りる約130人のオーナーと本棚をつくっています※8。柱1で引いた「一緒につくる仲間探し」も、このページにあります。

案内には「『どんな仕事?』『どうやって始めた?』『中富良野で働くヒントは?』を一緒に知りましょう」とあります※3。図鑑でこの仕事を語る人が登壇するなら、北海道へ移り住んで本屋を始めた人が、この町の人の前でその問いに答えることになります。

町で話す日/12月12日(予定)/対面。冬の窓のある小さな集会室で、本を囲んで話を聞く人々の遠い後ろ姿。実在の会場や登壇者を再現していない。
図2 図鑑に載る人から、対面で話を聞く日(予定)(※3)

協力隊を終えて町に残った人の仕事を、名前で並べる町もあります。北海道の中川町は「木工作家、樹皮細工作家、エゾシカ角彫刻、民泊経営、飲食店経営、フィッシングガイド」と書いています※12。

中富良野町で暮らし始める一年|10月の2泊3日、駅前の写真展、冬のニットの仕事

三つ目の柱は、住み始めた人の一年です。

入口は秋です。首都圏に住む20〜30代が、10月27日から2泊3日で暮らしを体験するプログラムが予定されています※13。初日は地元のスーパーで食材を買って夕食をつくり、移住コーディネーターや参加者と食卓を囲みます。

2日目の10月28日は、酪農体験と町めぐりの日で、行き先の一つに駅前BASE33が挙がっています※13。

その駅前BASE33では、10月17日から11月3日まで「まちなか写真展~わたしの中富良野~」が開かれる予定です。中富良野の写真ならどなたでも送ることができ、写真は、送った人のひとことを添えて並びます※4。

予定どおりなら、町を試しに来た人が、住む人と来た人の写真とひとことが並ぶ展示の前に立つ日です。募集のチラシには「あなたには、いつもの景色。だれかには、はじめての景色。」とありました※4。図鑑の最後のページと同じように、ここにも、誰かが書き込む場所が用意される予定です。

最終日は、感じたことを「イラストや言葉にしながら整理していきます」と案内されています※13。

住み始めてからの働き方について、図鑑のコラムの一つはこう書いています。「中富良野町には、余白があります。それは、何もないという意味ではありません。すでにある暮らしや仕事のあいだに、まだ手を入れられる余地がある、という余白です。」※14

同じコラムは「一つの役割だけに自分を固定しなくてもいい。」と続け、農業をしながら別の仕事をする人、地域の活動に関わりながら暮らしを立てる人、家族のケアと仕事を行き来する人を挙げています※14。

ニット修理職人のページにある道筋は、その組み合わせ方の一つです。技術を学んだあと、町でお手入れの会を開き、この町の畑と冬に合わせたサービスを考える、と続きます(図3)※15。ニットの修理は、寒い冬に依頼が集まる仕事だと、同じページは書いています。

図鑑の町の紹介ページによれば、この町は農業を中心に育ってきました。そして「冬の中富良野町は、北海道内でも降雪量の多い地域のひとつです」※16。雪の多い冬と畑仕事が、この道筋では、仕事の生まれる所になっています。

住み始めた人の一年/ニット修理職人/寒い冬。ニットと毛糸、針のある修理の机から、窓の外の雪に覆われた畑を望む場面。
図3 畑と冬に合わせて考えるニットの仕事(※15)

来た人の絵が計画の冊子の表紙になった町もあります。栃木県の鹿沼市は表紙を「地域おこし協力隊」の人の作と記し、鹿児島県の湧水町の計画書の表紙は、大阪市出身で2022年に移り住んだ人の絵です※17。

私の見立て|中富良野町は、読む人のためにページを空けておく町

ここまでの3つの柱を、モノサシの問いに当てはめます。図鑑の一人ずつのページでは、この町で仕事を始める人のために、地元の人と知り合う一歩までの道筋が用意されていました。12月の対面の回では、地元の人のために、図鑑に載る人が話す席が予定されています。秋の駅前には、住む人と来た人のために、写真とひとことを並べる場が用意される予定です。中川町は協力隊を終えた人の仕事を、湧水町は移り住んだ人の絵を、それぞれの計画に載せていました。

私の見立てはこうです。中富良野町は、読む人のために、ページを空けておく町です。「仕事は、見つけるものではなく、つくっていくものだから。」下巻37ページの左半分のこの一言は、2026年5月から町のホームページで誰でも読めます※18。

読む人のために/ページを空けておく町。大きく開いた白い図鑑と鉛筆、窓の外に農地と遠い家並みがある場面。
図4 読む人のために、ページを空けておく(※18)

中富良野町を数字で見たい人へ|人口・仕事・冬・移住の支え

項目 数字
人口 4,376人(2026年1月1日)※19
世帯 2,140世帯(同)
農業で働く人 38.6%(2020年)※20
医療・福祉 8.8%(2020年)
1月の最低気温 −13.6℃(上富良野)※21
富良野から 車で約10分※16
旭川空港から 車で約1時間

移住の支え(2026年9月時点の町のページ)

人口の推移と年齢別の出入りは中富良野町の人口ページに、暮らしのデータは中富良野町のページにまとめてあります。助成金の金額と条件は年度で変わるので、申請の前に町の現行ページで確かめてください。働く人の割合は2020年の国勢調査、気温は隣の上富良野町の観測点の1991〜2020年の平年値、距離と時間は図鑑の町の紹介のページ(2025年12月末現在)、セミナー・暮らしの体験・フェアは2026年9月時点の町の案内による予定です。

出典リンク集

本文の※番号に対応する資料です。括弧内は資料の頁・年と、確認した日付です。1つの番号に資料が複数あるときは「 / 」で区切っています。

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