
「当日に会場で握ったおむすびを持って1人ずつ撮影」。魚津市が2023年に呼びかけた撮影会には、写る女性が自分でおむすびを握る決まりがありました。米騒動から105年後を生きる女性の姿を、一冊の本として未来へ残す撮影です。※1
私は、米騒動を受け継ぐ活動なら、昔の出来事を聞き、伝えるものと思っていました。
ところが、この撮影を呼びかけたチームは、魚津で暮らす女性の仕事や楽しみを取材し、冊子「ウオヅとワタシ」を作ってきました。チームの名は「コメソウドウ」。2016年に魚津の女性6人で発足し、取材を重ね、冊子の表紙も撮影してきました。※2
では、なぜ米騒動の名を受け継いだチームが、今の暮らしを取材したのか。答えは、若い女性に魚津でもいろいろできると知ってもらうため、創刊号の聞き書き、店で話す会、住む女性の写真集を通して、町で働き楽しむ姿を届けようとしたからです。※3
この記事では、自治体と国が発表している一次資料を読んで見えてきた、暮らしを聞いて冊子にする、店で会って話す、住む女性を写真に残すという3つの柱を、移住後の仕事と住まいの相談先も交えて解説します。モノサシは一つだけ。暮らしを守ろうとした女性の歴史を、今の女性たちがどう使ったか。締めくくりに、私の見立てを置きます。
魚津市の女性が冊子を作る|米騒動の話と、今の仕事を一冊に
一つ目の柱は、暮らしを聞いて冊子にすることです。活動の始まりは2016年。市民委員と市職員が3人ずつ、合わせて6人の女性でチームを組みました。メンバーは同じ世代の女性に魚津の良さを伝える方法を出し合い、暮らしを楽しむ女性を取材するフリーペーパーの発行を決めました。※3
チームが活動名に選んだのは、魚津の主婦たちの行動を発端に全国へ広がった米騒動です。暮らしを守りたいという女性の強い思いを受け継ごうと、発足の翌月に名前を決めました。コメソウドウの「コメ」は、特に書き添えたいことに付ける「※」という記号です。そこに「SODO」を続けて、コメソウドウと読ませます。市の命名の説明には、『米(ライス)でなく、「大事」という意味を込めて、この記号を頭文字につかうことにしました。』とあります。その名で取材した最初の冊子には、昔の女性と今の女性の暮らしが並びます。※2
昔の暮らしを聞いた相手は、米騒動を体験した女性の家族でした。創刊号の見出しは「ホントは冷静な話し合いだった!?」。近所の主婦たちは井戸端で米の値上がりを話し、「米を県外に積み出すから魚津に米が少なくなり値段が高くなるんだ」と相談し、積み出しの中止を頼むことにした、と家族の話が続きます。子どもを背負って商店へ行ったこともありました。※4
同じ冊子の「魚津で暮らすひと」では、今の仕事を聞いています。最初の取材先、写真家の鬼塚仁奈さんは大阪府池田市出身で、出産と夫の転勤をきっかけに退職し、魚津へ移り住んだ後、2016年春にスタジオを開きました。「地域が支えてくれたところもたくさんあって、大阪にいたら今のようにスタジオを持ってオープンすることはなかったと思います。」※4
取材メンバーが若い女性に届けたかったのは、「魚津を含め、地方には楽しい場所や女性が働く場所が少ないと思われがちだが、魚津にいてもいろいろできる、楽しめるんだということを若い女性にも知ってほしい、そんな思いで取材にあたった」という声でした。冊子を市内全世帯へ配り、ショッピングセンターなど人が集まる場所にも置く計画を立て、創刊号の全世帯配布は市の実績にも残りました※3。
図1 暮らしを聞いて冊子にする(※3)魚津市の店で会って話す|冊子のお祝いは、いちじくのおやつに
二つ目の柱は、店で会って話すことです。チームは冊子の発行とともに、働く女性の実体験を聞く会も開きました。2017年3月12日、ホテルグランミラージュでの「女性のための起業支援セミナー」には、市内で店を開いて仕事をしている女性3人を招きました。※3 起業のきっかけや実体験を聞くトークイベントの後には、ランチの交流会が続きました。※4
ホテルでの会から、普段の店へ。2019年の終わり、チームは起業した女性の3つの店で「おみせめぐり」を開きました。参加者は店でスイーツを楽しみながら、開業のきっかけや経営で大切にしていること、私生活との両立について聞きました。起業を考える人も店のファンも集まり、参加者同士の話も弾みました。※5
店で話を聞いてきたチームは、冊子の5周年に、店と一緒におやつを作りました。2021年10月の特別号で組んだ相手はcafe PUMP。地元のひえばた園のいちじくを使い、「いちじくのパブロバ」を作った共同企画です。メレンゲに生クリームと実を載せ、いちじくのソースとピスタチオを添え、店で3日間販売する案内を載せました。※6
特別号では、おやつの材料を作る農園とカフェを取材しています。ひえばた園の稗苗さん夫妻は、稗苗地区で米を作っています。市内でいちじく栽培を30年間続けていた人の畑を借り、指導も受けながら育て、2021年で栽培3年目でした。誌面には、カフェのいちじくのオープンサンドと、チームのいちじくと大根の酢の物の材料や作り方も載っています。※6
2022年の夏号では、共同企画の相手だったカフェを訪ね、魚津に住んだ理由と開業までを聞きました。入善町出身の若林蘭さんと神奈川県出身の夫・良介さんは、祖父母の姓「若林」がなくなるのは寂しいと、結婚と同時に魚津の祖父母の家を継ぎ、メルボルンで暮らした後、2020年にカフェを開きました。※7
その店が目指す場所について、蘭さんは「メルボルンのカフェのような、居心地の良さや生きやすさを感じられる場所にしたいです。」と話しました。※7
店で会って話す場は、普段の買い物にもありました。カフェの取材と同じ号の特集は「自分サイズのお買い物」。持参した瓶や容器に、必要な量を入れてもらう買い物です。豆の老舗・大野商店では、用途に合わせて量を相談でき、変わった豆を食べてみたい時には調理方法も教えてくれます※7。
図2 店で会って話す(※7)魚津市で住む女性を写真に残す|自分で握ったおむすびを持って
三つ目の柱は、住む女性を写真に残すことです。仕事の始まりや日々の買い物を聞いてきたチームは、最後の活動で、今を生きる女性たちの姿を一冊の本として未来へ残そうとしました。2023年10月、市は翌年3月でチームの役目を終えると発表し、最後の活動に「ウオヅとワタシとオムスビ」という撮影会を呼びかけました。※1
撮影の対象は、魚津市に住む、または市内で働く女性。年齢制限はありません。米騒動から105年後の撮影会で、募集定員は105人でした。チームが訪ねた店主や作り手から、今度は在住・在勤の女性へと呼びかける相手が広がっています。参加する女性は、当日に会場でおむすびを握り、それを持って一人ずつ写る方法でした。※1
会場は三ケのミラージュハウスでした。同じ会場では、のろしファームの新米の量り売りと、HEAPSの焼き菓子販売も開く予定を案内していました。撮影は、創刊号で取材した鬼塚さんが、チームのメンバーとして担当する案内でした。※1
2023年11月24日と25日の撮影会で、参加者は自分で握ったおむすびを持ち、少し照れくさそうにしながら、それぞれ笑顔を見せました。※8
撮った姿を本にするところまで、チームは進めました。市の2023年度の実績には、ミーティング、撮影、編集を経て、写真集「Women in Uozu」を発行し、市内の関係機関に配布したとあります。募集時には、完成した写真集を図書館や協力店舗で閲覧できるようにする案内も出していました。※9
2026年も、市のページには「ウオヅとワタシ」の創刊号から9号までのPDFが残っています。カフェとの共同企画を載せた8号は、5周年特別号です※2。
図3 住む女性を写真に残す(※8)私の見立て|魚津市は、米騒動の「米」を「大事」の印に読み替えた市
暮らしを守ろうとした女性の歴史を、今の女性たちがどう使ったか。家族の記憶から出てきたのは、井戸端の相談でした。店との共同企画には、地元の実を使ったお祝いがありました。最後の記録には、住む女性自身が握った米が写りました。
私の見立てはこうです。魚津市は、米騒動の「米」を「大事」の印に読み替えたチームが、住む女性の今の暮らしを聞きに行った市です。
暮らしを聞いてきたチームの最後の撮影会は、2023年11月。冒頭で握るよう呼びかけたおむすびを、女性たちは自分の手で持ち、笑顔を見せました※8。
図4 「大事」の印に読み替えた(※2)魚津市を数字で見たい人へ|冊子・仕事・住まいと移住支援
市が公表する2026年10月1日現在の人口と世帯数です。※10
| 項目 |
数 |
| 人口 |
37,553人 |
| 世帯数 |
16,872世帯 |
人口や移住情報を併せて調べるなら、魚津市の人口ページと魚津市のまち情報も参照できます。
暮らしを調べる時の入り口も、本文の冊子と併せて挙げます。
- 冊子を読む:市の「ウオヅとワタシ」のページに、創刊号から9号まで(8号は5周年特別号)のPDFが掲載されています。各号の発行時点の取材や催しの記録として読めます。※2
- 仕事と住まいを相談する:市の移住・定住推進係は、雇用や住居、支援制度の相談を受け付けています。移住を考えている人への情報提供に加え、すでに定住している人の相談にも対応しています。移住・定住推進係の電話は0765-23-1095です。※11
- 医療・福祉職の移住支援:2026年4月以降の転入・就業など、全要件を満たす人が対象です。申請日に44歳以下、対象資格を持ち、市外での実務経験が2年以上あること等が必要です。※12
- 支援額:対象となる県外転入者の基本額は90万円、県内転入者は60万円。女性の申請者には電子地域通貨で60万円の加算があります。※12
- 申請期限:2027年3月中旬ですが、予算上限に達すると終了します。支援制度は年度で変わるため、居住歴、就業先、就業期間、他制度との併用等も含め、申請前に市の現行ページで条件を確かめてください。※12
出典リンク集