
山形県村山市では、2018年12月1日から、刀を持ったことのない人にも居合道を教える体験を販売しています。習うのは、基本の形「初発刀」です※1。
武道の発祥の地を訪ねるなら、ゆかりの神社へ行き、熟練した人の演武を見て帰る。私は、観光客の居場所を見学する側に限って考えていました。
ところが村山市では、客が道着に着替え、先生から刀の扱い方を習います※1。地元では、小学生も居合道クラブで稽古をし、全国の剣士が集まる場で演武を披露しています。
では、なぜ村山市の居合道は、発祥の地の演武を見せるだけで終わらないのでしょうか。
答えは、初めての人の体験では有段者が教え、海外の経験者も学びに来て、地元には学校のクラブと初心者を迎える伝承会があるからです。
この記事では、自治体と国が発表している一次資料を読んで見えてきた、初めて刀を持つ体験、海外から習いに来る人、地元で続ける子どもと大人という3つの柱を、仕事や住まい、冬の要点も交えて解説します。モノサシは一つだけ。居合を、誰が、どこまで続けているか。締めくくりに、私の見立てを置きます。
村山市で初めて刀を持つ|演武の見学から、初発刀を習う側へ
一つ目の柱は、初めて刀を持つ体験です。先生が刀を抜くのを目の前で見た後、客自身も基本の形を習います。観光物産協会が受け付ける体験には、道着と模擬刀の貸し出しも含まれています※2。
習う場所は、林崎居合神社のすぐ隣にある村山居合振武館です。協会は、隣の神社を居合道の発祥の地と紹介しています。居合の稽古では、礼から始め、自分で敵を想定して、決められた形を練習します。刀の扱いだけでなく、体をどう使い、どこに注意を向けるかも学ぶものです※2。
この稽古のある場所で、市は2017年から観光の体験プログラムを開発しました。翌2018年に販売を始め、スポーツ庁・文化庁・観光庁のスポーツ文化ツーリズムアワード2020では、特別賞の武道ツーリズム賞を受けています。用意したのは、演武や真剣での試斬を見るコースと、道着を着て形を練習するコースです※1。
自分で習うコースは、神社へ参拝し、有段者から居合の歴史や精神について聞き、演武を見るところから進みます。その後に、作法、刀の扱い方、初発刀を習う順番です※1。動きの意味や精神面についても、指導を受けます※2。
図1 初発刀を習う(※2)真剣での試斬が入るサムライ体験でも、実演するのは先生です。試斬をする先生の演武を、客は見学します。90分の居合道体験は、形を習った後に記念撮影へ進み、120分のサムライ体験は、形の稽古に先生の試斬を加えます※1。市は、外国人の客にも楽しめる内容として、この体験を売り出しました※1。
村山市へ海外から習いに来る|151人中93人、その先の経験者2人
二つ目の柱は、海外から習いに来る人です。外国の客へ体験を伝えるため、市は2022年度に英語と中国語のパンフレットを作りました。外国人体験者が増えたことも、市は記録しています※3。
翌2023年度、居合道の体験者は151人、うち外国人は93人でした。およそ6割です※3。海外からの稽古は、どんな人が、どんな動きを習う時間なのでしょうか。
図2 海外からの稽古(※3)人数の先の姿は、協会が2026年に残した体験の記録にもあります。8月6日掲載の記事では、ドイツから来た親子3人が、慣れない着物や刀の扱いに最初は少し緊張しながら、刀を振り、納める作法まで取り組んでいます。協会に伝えた感想は「楽しかった!」でした※4。
2026年8月7日には、オランダから、居合道の経験者2人が発祥の地での体験に加わりました。2人は協会に「発祥の地で学べて本当に良かった」という言葉を残しています※5。
体験の案内には、5時間のプライベート修行のプランもあります※1。自分で習うか、演武を見るかを選ぶ客も、続けて来ています。協会の「サムライ体験260923」では、台湾からの客が、先生の説明を聞きながら一つずつ動作を体験しました。「サムライ体験261006」では、米国からの客がサムライショーを見ています※5。
ここまでの客は、旅の途中に居合を見たり、習ったりする人たちでした。では、発祥の地に住む子どもは、居合をどんな形で習っているのでしょうか。
村山市で居合を続ける|小学生の演武と、初心者を迎える毎週の稽古
三つ目の柱は、地元で続ける子どもと大人です。村山市の楯岡小学校には、居合道クラブがあります。旧大倉小学校から引き継いだ活動で、市の学校紹介は「全国唯一の居合道クラブ」として紹介しています。子どもは日頃の鍛錬の成果を、全国各流の大会などで披露しています※6。
学校で習った形を披露する場の一つが、全国各流居合道さくらんぼ大会です。2012年6月24日の大会では、大倉小の児童が公開演武をしました※7。学校が変わった後も、2013年の大会には楯岡小の居合道クラブによる公開演武の記録があります※7。
2025年6月22日の第18回大会にも、楯岡小のクラブが出演しました。市が公開している当日の写真には、子どもたちの公開演武が載っています※7。
同じ年の9月7日、林崎居合神社で開かれた演武会には、全国から様々な流派の団体が集まりました。楯岡小の居合道クラブからは4〜6年生6人が参加し、筆頭の演武を務めました※8。
翌2026年9月13日、村山市には再び全国の流派が集まり、演武会が開かれました。テレビユー山形が伝えた、地元で居合を学ぶ中学生の感想は、「気迫のこもった演武が素晴らしくて、自分の今後の活動にいかしていきたい」でした※9。
地元の子どもが続ける居合を、移住後に初めて習いたい大人はどこへ行けばよいのでしょうか。林崎居合道伝承会は、入会や見学を希望する人に、稽古の時間に直接来るよう案内しています。経験は不問で、初心者も歓迎しています※10。
稽古場は、旅人が体験するあの振武館です。伝承会の案内では、小学生から80代まで30名超の会員が稽古をしています※10。学校のクラブとは別に、年齢の違う人たちが同じ道場で習う場があります。稽古は毎週水曜夜と土曜朝です※10。
地元の稽古を始めるときは、動きやすい服装で参加し、その後、必要に応じて稽古着を用意します。刀は稽古の際に道場のものを借りられます※10。
図3 地元の稽古(※10)毎週通うことが難しい人からの質問にも、伝承会は答えています。返事は「お休みもご参加も自由です。ご都合に合わせてお越しください。」です※10。
私の見立て|村山市は、発祥の地で初めて刀を持つ人にも居合を教える市
居合を、誰が、どこまで続けているか。旅の入口では、90分から基本の形に触れます。
海外から来る人には、経験者にも、発祥の地で学ぶ時間があります。
住む人には、学校から受け継ぐ演武と、初心者から通える毎週の稽古があります。
私の見立てはこうです。村山市は、発祥の地で初めて刀を持つ人にも、居合を教える市です。見学する旅を思い浮かべていた私の前に、道着に着替える客と、人前で演武する小学生がいました。移住後に習い始める人にも、刀を借りて、毎週の稽古へ通う入口が開かれています。
図4 毎週の稽古(※10)2018年12月1日から販売している体験の案内は、今もこう伝えています。「刀を持ったことがない方でも分かりやすく指導いたします」※1。
村山市を数字で見たい人へ|体験・仕事・住まい・冬の要点
体験と演武の数字は、それぞれの時点のものです。
| 項目 |
数字 |
| 体験(2023年度) |
151人※3 |
| うち外国人(同) |
93人※3 |
| 児童(2025年9月) |
6人※8 |
| 居合道体験 |
90分※1 |
| サムライ体験 |
120分※1 |
- 体験の申し込み: 観光物産協会へ予約します。体験料には道着と模擬刀の貸し出しが含まれます※2。
- 伝承会の稽古: 毎週水曜19〜21時と、土曜9〜11時。入会・見学希望者は稽古時に直接訪ねます※10。
- 振武館の利用: 市民以外も利用できます。市内在住の個人は3カ月前、市外在住の個人は2カ月前から電話で仮予約し、利用前に村山市民体育館で現金で支払います※11。
- 仕事: 2025年3月の市のハンドブックでは、広告の仕事を元の会社とのフリーランス契約で続けながら、農家のネットでの販路づくりや業務の効率化を支える移住者も紹介されています。移住前の仕事を続ける方法と、移住先で引き受ける仕事の両方がある一例です※12。
- 冬と学校: 市の案内では、山間部と市の南部で積雪量にかなりの差があります。候補の住宅の周辺で、通勤や通学の道、雪の置き場を確認する材料になります。市内の小学校は7校で、雪国のスキー授業や、アルペンスキーのできる学校もあります。学校ごとに特色が違うため、居合のクラブと同様に、通う学校の活動を確かめると、子どもの一年を具体的に考えられます※12。
市外から転居して賃貸住宅に入る世帯の家賃補助です。
- 1世帯当たり年6万円。2026年4月1日以降の入居で、入居時に同じ賃貸住宅に中学生以下の子か妊娠中の人が住む世帯は、年9万円です。通算最大5回で、毎年の申請が必要です※13。
- 対象は2021年4月1日以降に市外から転居した世帯で、家賃は月3万円以上。居住期間は2025年4月1日以降の入居なら継続1年以上、それ以前の入居なら6カ月以上が必要です。世帯全員が市に住民登録し、市税・水道料金・家賃を滞納していないことなども必要です。公務員のいる世帯は対象外ですが、会計年度任用職員は除かれます※13。
- 市営・県営住宅、社宅や寮、3親等以内の親族の住宅などは対象外です。初回は入居から1年(2025年3月末までの入居なら6カ月)がたった日以降、その年度末までに申請します。家賃が空き店舗等の助成対象になっている場合や生活保護を受ける場合などにも条件があるため、市の現行要綱で確認してください※13。
暮らしを試すときと、住まいを決めるときの窓口です。
- 子育て: 市は、保育施設等の3〜5歳児の給食費について、ごはん代とおかず代を無償化しています※14。
- おためし居住: 2026年4月13日〜2027年2月26日の間、1泊2日〜4泊5日で市内の宿泊施設を使えます。参加費と滞在中のレンタカーは無料ですが、村山駅までの交通費や飲食費等は自己負担です。担当者が希望に合わせて組み、先輩移住者との交流なども用意します※15。
- 空き家空き地バンク: 利用希望者は市へ登録を申し込みます。市は所有者との連絡を調整し、宅地建物取引業の団体への仲介をあっせんします。市自身は売買・賃貸の交渉や契約を仲介せず、仲介手数料も必要です※16。
人口の推移と将来の見通しは村山市の人口ページに、暮らしのデータは村山市のページにまとめてあります。助成金の金額と条件は年度で変わるため、申請前に市の現行案内で確認してください。体験人数は2023年度、小学生6人の演武は2025年の実績です。
出典リンク集
本文の※番号に対応する資料です。括弧内に資料の頁・時点と確認日を記しています。