
「生ごみは袋に入れずに直接コンテナへ空けるので、生ごみ以外のものが混入していないか自分でチェックできます。」山形県長井市のレインボープラン推進協議会は、そう案内しています。集積所に置くのは、70ℓのコンテナです。※1
生ごみは、分けて収集車へ渡せば、その先は処理施設に任せるものだと私は思っていました。ところが長井市では、農家がその生ごみからできた堆肥を買い求め、田畑に入れて米や野菜を育てています。その米は、子どもの給食にも出ます。※1
では、なぜ長井市では、生ごみを出す台所の話が、子どもの給食まで続くのか。答えは、家庭と農家が土づくりと食卓をつなぎ、外から訪れた人がその循環の続け方を問い、市が新しい設備でも給食へ返す道を用意しているからです。
この記事では、自治体と国が発表している一次資料を読んで見えてきた、長井市の土と給食、仕組みの見直し、新しい循環という三つの柱を、訪れた団体の声も交えて解説します。モノサシは一つだけ。「台所から出したものを、どう食卓へ返すか」。締めくくりに、私の見立てを置きます。
長井市のレインボープラン|台所の分別が、子どものごはんにつながる
一つ目の柱は、生ごみを土へ返し、給食につなぐことです。始まりは、1988年の市民会議。市内の若者が長井の将来を話し合うなかで、生ごみを地域の中で循環させる構想が生まれました。市民と行政が調査や試行、住民への説明を重ね、1997年2月にコンポストセンターが動き始めました。※2
その構想を、各家庭の手で進めています。生ごみ分別収集の対象は、中心市街地の約5000世帯。家庭で水を切って保管し、週2回、集積所のコンテナに空けます。貝殻や肉の骨、包装などは混ぜない。袋を外すと、自分が出す中身を見て確かめられます。※1
市から委託された事業者がコンテナを運び、センターで農家からの材料と合わせます。乳牛のふんを、市内の農家が週4日運び込みます。もみ殻は、毎年秋に市内の稲作農家から年間分を受け取り、センターで保管します。※1
台所の生ごみを、そのふんやもみ殻と混ぜて発酵させます。途中で切り返して酸素を送り、混入した金属や包装材などを取り除き、さらに熟成させる。投入から約80日で「レインボープランコンポスト」が出来上がります。※1
出来上がった堆肥は、JA山形おきたまを通して販売されます。農家はバラ売りで買い、田畑の土づくりに使います。家庭菜園や花壇で使いたい市民が買うのは、手軽な10kg袋です。※1
農家が規定量の堆肥を入れ、化学肥料と農薬を抑えて育てた米や野菜には、レインボープランの認証が付きます。売り場ではシールが目印。直売所やスーパーで市民が買うほか、子どもが食べるごはんにもなります。市内の学校給食の米飯は、全量がレインボープラン認証米です※1。
図1 子どもが食べるごはん(※1)給食の食材を作る農家は、何を受け取っているのでしょうか。2021年の提言では、学校給食向けの生産を高く評価し、その継続を求めています。農家の意欲を表す言葉は「地域の環境保全や子どもの育成に貢献する」、そして「生ごみを提供する市民の思いに応える」です。※3
長井市の資源循環と訪問|堆肥の設備を替えても、回収を生かす
二つ目の柱は、生ごみの輪を続けるために、仕組みを見直すことです。農家が応えようとする市民の思いを、次の設備でも受け取れるか。2021年には、農業関係者や一般公募の人も加わる11人の委員会が、4回にわたって検討しました。※3
堆肥を作るセンターは老朽化し、生ごみの回収量も変わってきました。委員会が出したのは、今の方式にこだわらず、手法や仕組みを見直す提言です。提言は2021年11月8日に市長へ提出されました。※3
新しい仕組みを検討していると知り、2025年3月10日、生ごみ焼却ゼロプラットフォームのメンバーが長井を訪れました。市役所、推進協議会、堆肥場を回り、農家とも意見交換しています。※4
訪れた団体の報告によると、堆肥場の維持費は年間最大3000万〜5000万円。それを支える補助はなく、補助の手厚いバイオマス発電の設備を選ぶことになった、と記されています。その中で参考になったこととして残したのは、「長年取り組まれた生ごみ回収のしくみを活用したいという思いがある。」という一文です※4。
図2 生ごみ回収(※4)ただ、回収の先を変えれば、農家が受け取るものも変わります。同じ報告は、堆肥化からバイオマス発電へ移ることに触れ、「副産物の液肥の活用方法は未整備」と指摘しました。※4
長井市の暮らしと給食|新しい設備から、液肥を給食の米へ
三つ目の柱は、市民の分別を、新しい設備でも給食へつなぐことです。液肥の受け取り先は、2026年3月に可決された予算で具体的になりました。市は、発酵後の液肥を全量農地へ返すために貯留槽を整備し、電気と液肥を使って通年で作物を育てる園芸ハウスも建てます。※5
設備の準備とともに、家庭への呼びかけも変わります。2026年4月の市の広報には、生ごみを分解するメタン菌の紹介が載りました。「生き物ですので、お腹を壊したり、死滅することもあります。分別をしっかり守って、みんなでメタン菌を育てましょう。」※6
育てるために家庭でできることは、食べ残しを分けるときにあります。メタン菌が食べられないものには、大型の骨や貝殻のほか、包装や水切りネットも挙げられています。中身の茶葉やコーヒーかすは出せても、ティーバッグやコーヒーフィルターは混ぜません。※6
家庭の生ごみを受け取るバイオガス発電設備は、2026年度下半期に試験運転、2027年度から本格稼働する予定です。酸素のない槽の中でメタン菌が生ごみを分解し、生じたガスを燃やして発電します。発酵後の原料は、液体の肥料、バイオ液肥になります※6。
図3 新しい循環(※6)液肥を作るときの水には、コンテナの洗浄水も全て利用する計画です。生ごみに水を加えて薄め、発酵槽へ送ります。施設内で使う水は下水道へ流しません。※6
発電した電気は設備の中で使い、余った分は隣接する農福連携園芸施設で使う計画です。ここでは作物を育てる仕事に、福祉の就労支援も組み合わせます。液肥の使い道は水田と園芸施設、そして市内6地区に設ける液肥スタンドです。※6
水田へは、液肥を散布車で届けます。土へ返す形は、堆肥から液肥へ変わる予定です。その液肥で新しいブランド米を育て、学校給食の米として提供する計画です。※6
給食の調理に使う電気についても、市は2026年4月の広報で、給食共同調理場の電力を、隣の市有地の太陽光発電を中心とする長井産の再生可能エネルギーで全てまかなう「RE100給食」を、5月から始めると告知しました。食材も電力も「地産地消」という取り組みです。※6
私の見立て|長井市は、台所から食卓へ返す輪を続ける
台所から出したものを、どう食卓へ返すか。米飯の全量という、子どもの日常で受け取る量がありました。方式を見直す中でも、長年の回収を生かしたいという思いを、訪れた団体は報告に残しました。新しい循環では、家庭の分別に、生き物を育てる役割が与えられています。
私の見立てはこうです。長井市は、家庭の分別でメタン菌を育て、給食の米へ返そうとしている市です。
図4 家庭の分別(※6)2026年4月の市の広報でも、家庭の「生ごみ回収地区・収集日はこれまでと同様です」としています。液肥と電気を作る新しい設備へ運ばれるのも、同じ集積所のコンテナからです※6。集積所に置くコンテナは、70ℓです※1。
長井市を数字で見たい人へ|人口・住まい・仕事・冬の準備
本文の循環を暮らしに重ねるときは、候補の住所が生ごみ分別収集の対象かも確かめたいところです。現在の協議会の案内は中心市街地が対象。2026年4月の市の案内では、新しい分別方法は年度内に改めて知らせるとしています。転入時には、その地区の最新の分け方と収集日を確認してください。※6
暮らしの入口を、小さくまとめました。人口の時点と、住まい・体験の条件は表の後に続けます。
| 確かめること |
入口 |
| 人口 |
23,595人 |
| 住まい |
空き家の内見登録 |
| 体験 |
お試し長井暮らし |
| 仕事 |
農家から直接指導 |
| 冬 |
水道の凍結対策 |
人口は2026年9月30日時点で23,595人、世帯数は10,009世帯です。市の月末人口の表示を使っており、国勢調査の数とは時点が異なります。※7
長い期間の推移は長井市の人口ページ、地域の基本情報は長井市のページで見比べられます。
住まいは、市の空き家バンクで売買・賃貸の情報を探せます。詳しい情報や内見には利用登録が必要で、日程は協力事業者と調整します。修繕が必要な物件もあるため、内見の際には建物の状態と改修費も確かめたいところです。※8
お試し長井暮らしは、2026年度のチラシでは原則2泊3日、連続利用は最大6泊7日。市内案内や先輩移住者との懇談を希望する人は、移住コンシェルジュへ相談できます。市内の送迎は行わず、寝具は持参するか市内の貸布団を利用します。冬は水道の凍結防止も利用規則に入っています。※9
宿泊場所は、フラワー長井線の南長井駅から徒歩14分、1.2kmの定住促進住宅です。市内で働くことを考えるなら、滞在中に候補の職場や買い物先までの移動も確かめられます。※9
働くことでは、稲作・野菜・果樹などの体験から、就農を目指す人の2年間の研修へ進む案内があります。農業を仕事にするなら、体験時に研修の受け入れ先、作目、必要な準備を相談できます。※10
住まいの費用には、県外から移住して賃貸住宅に入る人などへの家賃補助があります。2026年度の市の案内は、月上限1万円、最大24カ月。移住日前日までの県の移住登録が必須で、ほかにも申請要件があります。契約と転入の前に、地域づくり推進課へ対象となるか相談する順番です。※10
台所で使う水は、市の2026年9月の紹介では、全て地下45m以上の深層地下水です。長井の水道水の硬度は約17mg/Lです。※11
制度や体験の条件は年度で変わります。新設備の試験運転と本格稼働は、2026年4月に示された予定として記しました。申込みや転入の時点の案内は、末尾の市の窓口・ページで確認してください。
出典リンク集